大阪高等裁判所 昭和56年(う)16号 判決
右認定事実によれば,大阪産業大学学生竹林伸生は,下川省二を,同大学生橋本博己は,岸添達夫を逮捕したものであるところ,右下川,岸添は,同人らを含む被告人ら部外者15,6名の集団が兇器準備集合,建造物侵入罪等の犯罪を行った後間もなく,これを目撃した右竹林から犯人として追呼され,更に,右竹林の追呼に応じた右橋本らからも順次追呼されていたものであり,かつ,犯人が犯罪の用に供したと認められる兇器を所持していたのであるから,右下川及び岸添が準現行犯人に当たることは明らかである。
所論1は,逮捕した者に被逮捕者である岸添らを司法警察職員に引渡す意思が欠缺していたので現行犯逮捕は違法であるというけれども,刑事訴訟法213条は「現行犯人は,何人でも,逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と規定しているのみであって,逮捕行為に着手するに当って,逮捕の目的を問わないことはもとより,被逮捕者を司法警察職員に引き渡す意思の存在まで要求しているものとは解されないから,右所論は採用できない。次に,所論2について考えるに,準現行犯人を逮捕しようとする場合において,準現行犯人から抵抗を受けたときは,逮捕しようとする者は,その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許されるものと解されるところ,これを本件についてみるに,橋本は,岸添を兇器準備集合罪等の準現行犯人として逮捕しようとした際,同人から前記のとおり激しく抵抗を受けたため,これを排除しようとして同人の右顔面を一回膝で蹴ったと認められ,右の行為は,本件事案の性質,逮捕されるまでの経緯,とりわけ逮捕時の状況に照らし,社会通念上相当性の範囲を逸脱したものとは認められない。